第1章 日常からの、非日常
え!信じてくれた!?
そしてもしかして、安室さんにバレないようにしてくれてる?
「安室さん、この人ちょっとおかしいんだ。」とか言われかねないと思ってたけど。
コ「咲お姉さん、僕暗くなったし帰るね!また明日もここで遊ぶ約束、忘れないでね!」
『っ、ぁ、うん…?あ!家まで送るよ!』
そんな約束した覚えはないけど、私に拒否権はないだろう。
明日も夢を見続けているという保障はないけれど、コナンくんとお近付きになれるのはなんだか楽しくもあった。
信じてくれてるみたいだし…?
安「あの…咲さん?でいいですか?」
これまで黙っていた安室さんに、不意に声をかけられる。
『はい、』
安「僕の名前をどこで?」
『……』
そういえば、さっき咄嗟に呼んでしまった気がする。
(またやってしまった…)
微笑んでいる安室さんの目は笑っていない気がした。
さっきポアロでコナンくんと話しているのを聞かれていたみたいだし、更に安室さんのことも知っているとなれば当然だ。
だけど、彼はかっこいいと有名みたいだし…
コ「…僕がさっき教えたんだよ!ね?咲お姉さん?」
人伝てに聞いた、とでも言おうかと思い口を開きかけた私より先に、コナンくんが声を出した。
『っそ、そうなんです。かっこいいねって話して!』
安「そうだったんですね。」
『ごめんなさい。勝手に名前を聞いたりして…』
信じているのかいないのか、どちらともつかない安室さんにとりあえず頭を下げる。
安「いえいえ。咲さんみたいな可愛らしい方にそんな風に言っていただけて光栄です。」
『は、はは…。かえろっか?』
これ以上この話はしたくない。
引きつってない自信なんか微塵もないけど、私は笑顔でコナンくんに向き直った。
のだけど。
安室さんに車で送ってくれると言われ、結局断ることもできずに車に乗ることになってしまった。
コ「安室さん、ありがとう!咲お姉さん、ばいばい!」
『またね』
笑顔で手を振るコナンくんは何か言いたそうにしていたけど、毛利探偵事務所の前で別れ、
車内にはなんとなく居心地の悪い空気が漂った。