第11章 君の王子様になりたかった
「だから、つい、きみのことをともだちにはなしたんだよ、そしたら水族館のチケットをくれてね…」
「え、あのチケット...」
「しかも、きみは、なんでかそのともだちをぼくのかのじょだってかんちがいするし...」
「えっ」
「せっかく、きみにかっこいいとこをみせて、たのしくすごして、こくはくしようって、おもってたのに...」
「ええっ!!」
本当に焦ったんだからね、とぷくりと頬を膨らませた彼が拗ねるように言ってきたけど私もだわ!!今の私もめちゃくちゃ焦ってるわ!!!!
まさかの...私が誤解してしまったあの子が付き合うきっかけになった水族館のチケットをくれただなんて。ああ~光忠さんにもその子にもかなりの罪悪感...!!
「ご、ごめんなさい...!知らなかった...」
「ん!」
「...でもいいんだ、いまはこうしてきみが、ぼくのいちばんちかくに...いてくれてる、から...」
すりすりと頬を寄せてくる姿は不機嫌さは無く...ただ話したかったのかな。数ヶ月も前の事だけど、今でも光忠さんの中に残る事柄だったんだろう。それについては私も同意しかない、あの時は生きた心地がしないまま当日を迎えたから。
でもこうして今があるのだからと思えばかわいいものなのかも知れない。
ふいに背後の体に重みが増してくる。心做しか話し声のふわふわ感も...これはもしかして、寝る...かな?
「...ずっと、いますよ、近くに」
なんだか、安心してほしくて口をついた言葉が予想外に震えていた。でも気付かれはしないだろう。そろそろお布団いきましょうか、と誘導すべく動こうとして更に抱く腕が強まるのを感じる。確実に酔ってはいるけれど、意志をもったそれは離れることは無く...
「光忠、さん?」
「...んん...」
「寝ますか?寝るならベッドいきましょう?」
「...んー...」
今2人で座るソファはあまり大きくは無い。一緒に横になるにしてもはみ出してしまうだろうし落下の心配もある。だけど、どうやらベッドまで移動するのは難しそうだ。彼は既に半分以上眠気に負けてしまっている。最悪、膝にブランケットを掛けていたからそれを掛け布団代わりにするしかないがあまりにも心許ない。