第11章 君の王子様になりたかった
私が軽く口にしたミネラルウォーターを渡すとごくごくと飲み干し、間接キスだねえ、なんて嬉しそうな蕩けた笑顔で見つめてくる。もうほんと勘弁してくれないかな、貴方は自分の顔の良さを遺憾なく発揮し過ぎなんですよ...計算??計算か??いやこの泥酔具合では無理か...くそ...動画を撮ってこの痴態を彼に見せてやりたいがあいにく拘束が強すぎてスマホを取りに行けない。というか、さっきいじろうとしたら「僕がいるのにスマホで誰とやりとりするの?」と取り上げられていたのでどうしようもない。
彼のこの酔い方は最初は本当にびっくりしたし慌てたけど...もう今ではちょっと慣れてきてしまった所もある。私も大概だとは思っている...。
「はいはい、お水飲めましたね~偉い偉い」
「んん、ふふ...」
体制的にややキツイが右腕をどうにかこうにか動かして頭を撫でてやると光忠さんは気持ちよさそうに目を閉じた。いつもならこうなると直ぐに寝てしまうので無理にでもベッドへ連れていくのだけど...今日はふわふわとしながらもまだ眠たそうにはしていないから様子を見ようかな。
「ぼくねぇ、今ほんとにほんとにしあわせなんだ」
「......」
「きみとつきあえて、よかった」
突然何を言い出すのか、心底驚いた。
まさかこんな話になるだなんて誰が予想出来ただろうか。何がきっかけだったのか、私はわからないけれど...光忠さんはつらつらと話を続けた。
「はじめはね...どうしようってなやんだんだ、だってきみはほかの女の子とちがうから...」
今までの戦法?が通用しなかった、らしい。
他の女の子と同じように口説こうとしても動揺しつつもあしらわれてしまうし何より内面を見てくれるからこそ難しかった、と。
一緒に飲みに行くたびにもっと会いたいと、過ごす時間が足りないと思っても上手くいかない。“飲み友達“という括りが邪魔をする。