第11章 君の王子様になりたかった
お付き合いする前、一緒に飲みに行く時はいつも居酒屋。お互いがお互いに迷惑をかけないように気を使う所謂大人の飲み方を心がけた。
だから飲み過ぎによる体調不良や悪酔いなど一切縁が無かった。私も彼も節度を守れる大人だったのだ。だったのだが。
心を許しあった恋人同士+気楽な宅飲み(in私の部屋)の威力はとんでもなかった。
私は合コンの際に飲み過ぎで体調不良を起こした光忠さんも環境が環境ならばちゃんとお酒を楽しむことができる事を知っているが、気張ることの無い心身共に身軽な状態での飲酒が彼にどう影響するかまでは知らなかったのである。
「んんー...、ふふ...」
「光忠さーん、そろそろお水飲みましょうねー」
「やだ」
「やだじゃないですよー、喉カラカラでしょう?」
「...うん...きみは、のむ?」
「飲みますよ」
「じゃあ、ぼくも、のむ...のませてくれるの?」
「自分で飲んでくださいねー」
「ええー...」
真っ赤な顔でニコニコしながら呂律が回っていない彼は後ろから私を抱きしめるように座りピッタリとくっついたまま離れず(あ、これは通常運転か?)ふわふわと頭を揺らしている。
オマケにいつもより割増で甘えたさんときた、これには私もさすがにしまったなあと...思って...いるのだが...
「えへへ...かわいい...きみはほんとにかわいいねえ」
「だーいすき、だよ」
ちゅっちゅっと私の頬にキスをしながらのベタ甘なセリフの応酬に羞恥よりも嬉しさが勝ってしまっておざなりにはできずにいる。ああ...まさかこんな風になってしまうとは思わなかった...可愛い...可愛いのは貴方ですよ光忠さん...。ぎゅうぎゅうと私を抱きしめる腕の力は可愛さの欠けらも無いけどな!ちょっと痛いんだこれが!この力持ちさんめ!!!!