第1章 さよならの後には
「まあ、こんな時もありますよ」
「そうかなあ」
「そうですよ、これっきりじゃないんだし...これで見限られるようなら相手はそれまでの人間だったって事で」
「......」
だってそうだろう、むしろ良い判断材料ではないだろうか?自分が本当に困った時に相手がどんな態度・対応をするか。それによってお付き合いの先にある結婚というものに対してのモチベーションも変わってくるはずだ。無理矢理作り上げた自分で付き合い続けるより自然体で居られる方が良いに決まってる。
...と、思ってる。
まあ私は自然体過ぎて女として足りない!と良く同僚にはお小言を頂くけれども。なにごとも程々にと言いたかったんですよ。
「確かにかっこいいか悪いかで判断するしかないならアレですけど、人間それだけじゃないじゃないですか」
「......」
「深く関わってみないとその人がどんな人間なのか分からないのに、想像やら推測だけで期待されるのもしんどくないですか?」
「...まあ、確かにね」
多少なりとも推測や想像はするのは仕方ないにしても決めつけは良くない。あとから”こんな人だとは思わなかった”なんて言われても知ったこっちゃないからな!
多分そんなニュアンスな事を言ったと思う。
良く良く考えてみたら私はまるでお兄さんを必死にフォローしているようじゃないか、いや間違ってないのかも知れないけれど。だってなんていうか、格好つかないねと言った表情があまりにも疲弊しているように見えてしまって。ああ、顔が良くても良いなりの苦労があるんだなあと。なんとなくそう思ってしまって。
「...君は、格好良いね」
だから返ってきた言葉に思わずお兄さんの方を見てしまった、ら。
(...わわ!)
それはもう穏やかに、綺麗な目を細めて微笑む姿に口を開けたまま見とれてしまった。なんだ、こんな風に可愛らしい顔もするんじゃないか。
合コン会場で女の子らにしていた顔よりもずっとずっと好感が持てた。
でも同時に気づいてしまった、これはあの女の子達が求めている顔では無かったんだろう。なんて勿体ない。そして舞い上がらずにしっかりと彼に向き合う女性はどれだけいるんだろうとひっそりと同情をした。