第1章 さよならの後には
「...それは、あれですかね?女らしくない的な?」
「えっ?!あ、いやそういうわけじゃなくてね...」
思わず軽口をたたいてしまったら、それはもう慌てふためいて「うーん、参ったなあ」なんて言っている。どうやら内面にも少し可愛らしい所があるようだ。お互い顔を見合わせてくすくすと笑い合う。もうお兄さんは憂いた顔をしていなかったからちょっと安心した。すると、
「ああー!長船さんこんな所にいた!」
合コン参加者の女の子2人が御手洗へと向かうのだろう、こちらに来て私たちに気付いたようだ。
「あ、では私はこれで失礼します」
面倒臭い事には巻き込まれたくないと私はすかさず立ち上がりホールへと向かった。後ろからお兄さん(オサフネさんと言うのか、今初めて知った)の声が聞こえた気がしたけど多分女の子達と話しているだけだろうと特に何も考えなかった。
その後、合コンは終了。
私は先輩に許可を貰って結果を見る前に早々に退散してしまったからあの後お兄さん...オサフネさんがどうなったかは私は知らない。ルール違反なのは承知しているがあの場でよもや私を選ぶような変わり者はいないだろうと踏んだからだ。色々あったが普段お目にかかれない美味しいご飯とお酒をたらふく頂いたちょっと騒がしい食事会に参加したのだと思っていた。
「ねえ、今ちょっといい?」
「はい、何でしょうか」
「はい、コレ」
「???」
後日のお昼休み、先輩とたまたま休憩が被った。そういや先輩はあの会で上手いことお相手を見つけることが出来たようで今その方との仲を育んでいるらしい、良い事だ。
その先輩から白い小さな紙を渡される。何かと警戒するも何やらニコニコしながらズイッと差し出され、やや圧倒されながらも受け取る。
「あの時貴女すぐ帰っちゃったじゃない?そうしたらこれを渡して欲しいって頼まれたの」
「...はあ」
なんだ、何事だ?私何かしたっけかな?よく分からないままその紙を見るとどうやら名刺のようだ。しかもなんか、これ社名聞いたことあるぞ?!大手一流企業じゃないか!こんなお偉いさんが中小企業チェーン店の販売員に何の御用で...