第6章 私の心の行く先は
「長船さんでしたよ...?一緒にいた先輩も気づきましたし...」
「先輩?」
「あの、合コンの主催の...」
「ああ!彼女か!...となると...うーん...」
長船さんは顎に手をあてて考え込んでしまった。そんなになるほど悩んでしまうくらいには記憶に無いらしい。さすがに私もこれはちょっとおかしいのではないかと思えてきた。
ここで一旦アイスティーを口にして落ち着く。私はすぐ動転してしまうからちょっと頭を冷やしてその時の記憶を整理することにした。
私の休日は火曜日と金曜日だ。加えて稀に日曜日に頂けたりする事もあるのだが自分からは希望をして取れない。その日は混雑していた金曜日で、ちょうど...
「...確か...3連休に入る前の金曜日で...」
「......うん」
「時間は..14~15時...」
「.........」
忘れもしない、先輩と長めのランチをして目当ての買い物をしようと改めて街に出た時間帯だ。どこかに入っていた訳じゃなかったから場所までは覚えていないけど...。んん、と小さく唸り声を上げた私の前で長船さんが小さく声を出した。
「...まさか」
「...?」
慌てた様子でスマートホンを探す長船さんをぼんやりと眺めている。どうやら何か心当たりでも見つけたんだろう。途端にお腹がぎゅうっとなる。ああ、心当たりがあると言うことは何かしらの事情があるのだ。やっぱり、これから受けるのは死刑宣告だ。仕方ないじゃないか、仕方ない。しつこいようだが私が望んだのは長船さんの幸せであって隣にいる権利じゃない。私は...
「...ねえ、僕の隣にいたというのはこの子かな」
俯きかけていた私の目の前に長船さんのスマートホンがずいと寄せられる。ダイレクト!ダイレクトなのか!!!じわじわじゃなく一思いに殺るタイプか!いいぞ来い!うう、お腹痛い...出来るなら見たくないけどはっきりさせたい...どうしようもない気持ちに苛まれながらもスマートホンを失礼して画像を見る。
写っているのはまさに長船さんと腕を組んでいた明るい色の長髪の女の子。メイクはしていないのに目がくりっとしてそれはもう可愛い子。一緒に写っているのもこれまた可愛い女の子。ショートカットでボーイッシュだがメイクが上手いのか格好良い。