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【とうらぶ】我が家の燭さにが現世で出会ったら

第1章 さよならの後には



「...ん?」

この店はあらゆるフロアが広い。もちろん御手洗も例外ではなくちょっとした廊下の先には待ち合いが出来る所があり、その先に男女それぞれの御手洗がある。その待ち合い場のソファに男性が具合悪そうに座っているではないか。飲みすぎてしまったのか、深く俯いたまま動かないでいる。

「あの、大丈夫ですか?」
「...え...?ああ、君か。うん、大丈夫だよ」

思わず声をかけた私にだるそうに顔を上げてくれたその人を見て驚く。合コンの参加者のお兄さんだ!しかもびっくりするほど色気のある美丈夫で女性メンツがこぞってお酌やら料理の取り分けやらで群がっていた。さっきまでドロドロしたやり取りをしていたかと思っていたが、いつの間にここに居たのか...飲み食いに夢中だった私には気付ける余地などなかった訳で。
...じゃなくて!見るとお兄さんの顔色がすこぶる悪い。こりゃあれだ、女の子達に派手に飲まされたやつだわ。

「うわ、ちょっと、待っててください!」
「え?あ、」

自分で言うのもなんだが、私はそこそこ酒が飲める方で。私を潰してやるー!と息巻いて共に宅飲みをした女友達数名を介抱したことが何度かあったり、職場の飲み会でカクテルやソフトドリンクを手にする同僚の中1人日本酒を傾けていたりと...。いや、女としてどうなのだろうと思ったりはするが、酒が好きだから仕方ない。
お兄さんの症状はその介抱した友達のそれと良く似ていた。きっと少なからず吐いただろう。
そんな時は兎にも角にも水分補給だ!
そう思った私は咄嗟に店の外にある自販機まで水を調達しに走った。

「あの、これ、どうぞ!」
「...え?」
「今買ってきて綺麗なやつなので!」
「で、でもいいのかい?」
「そんなのいいに決まってるじゃないですか!...ちょっと冷えてるんで少しづつゆっくり飲んでくださいね」
「あ、ああ、ありがとう」

まさか私が水を手に戻ってくるとは思わなかったのだろう。そして私の押しの強さにも驚いただろう。なんだがバツの悪そうな、困った顔をしながらもお兄さんは水を受け取ってくれた。

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