第2章 心を解き放って
なんだこれ
色々とツッコミが追いつかないのだけれど何よりも、私達はお互いに同じような事を考えてたということが衝撃すぎた。
ちらりと盗み見た長船さんはなんとも慈愛に満ちた笑顔で私を見ている。なんだかちょっと、ちょっとだけ、胸が苦しくなった。
「...その、言葉」
「そっくりそのまま、返し、ます...」
伝えた方が、良いと思った。
長船さんが伝えてくれたから。
私の言葉に、撫でる手が一瞬止まった。彼がどんな顔をしているのか知りたかったけど...それよりなにより気恥ずかしくて顔が上げられない。
すると、くすりと小さく笑う声が聞こえてまた撫でる手が動き出す。あまりにも優しすぎてこれ寝ちゃうんじゃないかな?
「ありがとう、...照れているのかな?」
「...違います」
「ふふふ、君は可愛いね」
ちょっと待て 何を言っているんだ
そんな言葉をかける要素が私のどこにあったんだ、いやそんなことよりもだ。今だに撫でてくる手を軽くぺちんと叩くと顔を上げて睨む。
「可愛くないです!てかそういう思わせぶりみたいな事するから女の子がホイホイされちゃうんですよ!」
「ええ?いくらなんでも、こういう事をしたいと思う人とそうでない人は弁えているつもりだよ?」
「...つまり?」
「誰彼構わずにしないって事だよ」
むう、それなら良い、良いと思うが!なんとなく釈然としない。...という様が顔に出ていたんだろう、私はポーカーフェイスなんぞはできない。それを見た長船さんは眉を下げて申し訳なさそうに笑った。
「...でも、君が嫌だったなら軽率だよね...ごめんね」
「......」
「僕がしたいと思う事をして、君に伝えたいと思った事を伝えた、それだけなんだ」
なんで...そんな風に寂しそうに笑うんですか...。心臓に悪すぎる...これが計算とかだったら本当にタチが悪いけれど、長船さんは大真面目なんだろう。