第2章 心を解き放って
「...別に、嫌ではなかった、です」
「ほんと?」
「気持ちよくて、寝るかと思ったし...」
「ふふふ」
「笑わないでくださいー!...ただ、こちらも思った事を言ったのと...照れくさかっただけなので」
「...だから、私もごめんなさい」
「......うん」
ありがとうとごめんなさいは大事な言葉だと教わったのは誰からだったろう、もう忘れてしまったけれど...意味は忘れていない。長船さんにあんな顔をさせるつもりは無かったんだ。
でもなんだろう、私はこんなに素直に人と向き合えた事が今までどれだけあっただろうか...情けない事に気まずさに逃げてしまったこともある。その時の仲は修復できたり出来なかったりと様々だけれど...わだかまりは多少なりともある。
もっとこう出来ていたら、私の拙い人間関係のやり取りも少しは向上しただろうか…。
「...そんな顔しないで」
優しい声と共にまた、私の頭に大きな手が乗った。そんなに酷い顔をしてしまっていただろうか。
「君は、不器用さんだけど...とても思いやりのある良い子だね」
「ちょっと伝わりにくいけれど、僕にはちゃんとわかるよ...だから大丈夫」
本当に、この人は何を言っているんだ
やめてほしい、酒が入っているせいもあってかちょっとだけ泣きそうになってしまうじゃないか。本当に...ちょっとだけ。
「忠告ありがとう、これから気をつけるよ」
「...ぜひ、そうしてください」
私が願うのは長船さんの幸せであって、苦しんだり悲しんだりする姿じゃない。今後彼の本来の姿でこの穏やかな優しさを素直に受け止められる良い人が現れたらいい。その時は盛大にお祝いをしたいものだ。
「...で、君は僕にホイホイされてはくれないのかな?」
「弁えているんじゃなかったんです???」
「はは!つれないなあ」
本当に何を言っているんだ