第2章 翡翠の花嫁(元就/狂愛チック/戦国)
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・団子屋の娘と元就様
・狂愛チック
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嗚呼、神様。
どうか私に教えてください。
……私の運命の歯車は、一体どこで狂ってしまったのかを。
「いらっしゃいませ!……あ、お侍さまっ!!」
「、久しいな」
ひと月前、私が一番幸せだった頃の話です。
私は。
安芸の下町にて小さな団子屋を経営する両親の元へ生まれ、貧しくも平和な毎日を過ごしていました。
……そう、本当に平和な毎日でした。
朝早くに起きて父と共にお団子の仕込みをし、母とお客様をもてなしながら他愛のない話に花を咲かせ、夜になればお店の掃除をして眠りにつく。
団子屋の仕事は大変でしたが、決して苦ではありません。
私の作ったお団子を「美味しい」と言ってくださるお客様の笑顔が大好きだったからです。
ただ、母は「手伝ってくれるのは本当に嬉しいのだけれど、こんなにも可愛い娘が行き遅れだなんて勿体ないわ?」なんて言って私の嫁ぎ先を心配していた様です。
……正直、私は殿方へ嫁ぐという気持ちがあまりありませんでした。
大好きな両親と団子屋のため、この身を捧げる覚悟を持つほどに。
そんな思いを持っていた私の前に現れたのは、「お侍さま」でした。
「お侍さま、今お団子をお持ちしますね」
「……ああ」
お侍さまは一昨年の冬頃から、定期的に団子屋へ足を運んでくださるお得意様です。
美しい顔立ちと姿勢の良さに加え、上質で柔らかそうな布が使われた着流しを着るお侍さま。
下町の娘である私とはいえ、お侍さまがそれはそれは身分の高い御方だということはすぐに分かりました。
ですので私はお侍さまに失礼の無い様に気を配っていたのですが……お侍さまが「楽にして良い」と言ってくださったため、こうして普通のお客様として接しているのです。
「お侍さま、お待たせしました」
「……ふむ」
「今日のおすすめはみたらしでーー」
「、話がしたい。故にそなたもここへ座れ」
「は、はいっ!」
お侍さまがぽんぽんと腰掛けを手で軽く叩く。
お侍さまがこうする時は、私に安芸より外の地の話をしてくださる時でした。
……私は、お侍さまがしてくださる外の地の話と……
お侍さま自身が、大好きでした。