第1章 ※雑食とりっぷ!※
【瀬戸内編 ①】
オトンからよく「暴れ馬」と呼ばれている私は、たしかに普通の人と比べて少しはしゃぎすぎなところがあるのは認めます。
でも仕方が無いよね?ここは私の憧れ、BSRの世界だよ?
そんな世界にトリップしたんだし、今萌えずしていつ萌えよというの?今でしょ??
……でもね、オトン。
そんな私にだって、苦手なもののひとつやふたつはあるんです。
「遅かったではないか、よ。魚を求め中国の地へ向かっているという知らせは本当だったようだな」
「……元就さん……」
私を見下ろす、氷のように鋭い目。
そう、ここは私の脳内苦手な人ランキング2位……
詭計智将「毛利元就」の領地、安芸だ。
そんな安芸にて私は、捨て駒さんにこれでもかというほどキツく縄で縛られた状態で元就さんの前に差し出されている。
さて、ここで問題です。
私は何故、元就さんが苦手なのでしょうか?
答えは……
「して、我の正室となる覚悟は出来たのか?」
「ちっっっとも出来てないです」
「フン。遅かれ早かれ中国と毛利のため、そなたはその身を我へ捧げねばならぬのだ。早う覚悟を決めよ」
……はい、これが私の苦手な理由。
元就さんは自国と家の繁栄のためならどんな手段も厭わない人だから、です。
初めて会った時以来、私が持つ未来の知識と料理スキルを今後のために利用できると高く評価した元就さん。
そのせいで今回のように捕えられては、強引に正室の座を勧められ……今に至るというわけだ。
「……でも、私は奥州に滞在してますし……オトンや政宗さんも心配しますし……?」
「つまり奥州を攻め落とせば、そなたの所有権は我の物になると?」
「っ……!?」
「そうだ、そのまま大人しくしているが良い」
満足そうな声で呟いた元就さんが私の肩をトンっと軽く押す。
当然抵抗できない私は重力に従い、畳へ背中をぶつけてしまう。
そして痛みと共に私の視界に広がるのは、木造の天井と……
「フッ……初めは衆道を好む不埒な女だと思っていたが、黙っていればマシに見えるものよ」
「ひゃっ!!?」
私の上に覆い被さる、元就さんの姿でした。
ーー拝啓、親愛なるオトン。
は今、まな板の鯉が如く……貞操の危機に陥っています……!!!!