第1章 ※雑食とりっぷ!※
【武田編】
「お館様ぁ!!」
「幸村ぁあ!!!!」
ここは信玄公ことお館様が治める甲斐、武田道場。
ドカッ、グシャッなんて生々しい音が道場に響き渡るのは、幸村くんとお館様が武田名物殴り愛を行っているからである。
あぁ、なんて……
「……なんて、素晴らしいんだろう!!殴り愛はいつ見ても最高だねっ、オカン!!」
「そんなこと言うのはちゃんだけだし、俺様はオカンじゃないってば!!?」
私の発言に佐助は少し不満そうにしているけど、お館様の拳が幸村くんへめり込む度に彼がハラハラとした表情になるのを私は知っている。
きっと、幸村くんのことが心配で心配で仕方が無いんだろうなー……うん!!やっぱり武田軍は良いね!!←
「ちゃん、今変なこと考えなかった?顔が凄いことになってるんだけど」
「えへへ、つい……あっ、佐助!!はい、いつものやつ!!」
そう言って佐助へ渡したのは、パウンドケーキの入った小さな包み。
実は幸村くんに南蛮のお菓子が食べたい!!と必死に頼まれて以来、時々奥州から彼等へ手作りのお菓子を届けに来ているのだ。
……忍にお願いするのが一番だけど、殴り愛を見るためなら苦労してでも馬に乗って来なきゃだよねー、ふふふっ!!
「ぐああああっ!!!!」
そうこうしているうちにお館様のトドメの一撃が幸村くんにクリティカルヒットしたらしい。
私の真横を弾丸の如く吹っ飛ばされた幸村くんが通過してゆく。
「おお、ではないか!!」
「お久しぶりですお館様!!」
「っ、殿!!いらしていたのですか!!」
「幸村くんも久しぶりだね!!今日もお菓子持ってきたよ!!」
殴り愛が終わり、ようやく私の存在に気付いた幸村くんがボロボロの体で駆け寄ってきた。
余程私の持ってきたお菓子が食べたいのか、既に目がきらっきらしているのが最高に可愛い!!
「して、甘味はどちらに!?」
「あ、佐助に渡したよ?」
「佐助にでござるか!!某より先に殿から甘味を頂くとは…………
……減給だな(ボソッ)」
「!!?」
「がっはっはっ!!」
真っ黒な幸村くんに真っ青な佐助、お館様の元気な笑い声……
うん、今日も武田は平和です!!←