第4章 ■遣らずの雨(佐助/微裏/現代)■
「ここが俺様の部屋だよ、気に入ってくれた?」
ストーカーに手を引かれるがまま辿り着いた先は、いかにも高級そうなマンションの最上階にある部屋だった。
「……って、ちゃん?さっきから泣きそうな顔になってるけど大丈夫?」
「っ!?」
突然ぐいっと至近距離で顔を覗き込まれたため、私は反射的にストーカーの身体を押し退けてしまう。
すると、ストーカーは暫し目をぱちぱちと瞬きさせながらきょとんとした顔をしていたが……
やがて、にっこりと人当たりの良い笑みを浮かべて私を見つめた。
「そんなに怖がらないで、ちゃん。俺様、今日は変なことしないつもりだからさ?……とりあえずお風呂に入ろっか」
「……いっ、嫌……!!」
「お風呂は嫌?……んー、もうしょうがないなぁ……じゃあ濡れた身体を拭いて、新しい服に着替えようねー?」
そう言ってストーカーは、タオルを探しにどこか別の部屋へと向かう。
……逃げるなら、今しかない。
私は震える足を必死に何とか動かして、玄関の方へーーーー
「こーら、逃げないのっ」
「きゃああっ!!?」
後一歩というところで背後から伸びた手が私の身体を絡め取り、抵抗虚しくあっさりとストーカーに抱き寄せられてしまう。
「ねえ、どうして逃げようとしたの?」
「……だ、って……私、貴方のことなんて知らな……」
「俺様のこと忘れちゃった?もー、ちゃんってばうっかりさんなんだから!……でも、そんなところも可愛くて俺様だーいすきっ」
「ふぁ、っ……!?」
耳元で酷く甘い愛の言葉で囁かれたと同時に、熱を持ったざらりとした何かが私の耳をなぞるように這った。
……何か、だなんて見ずとも分かる。
その正体が、ストーカーの舌だということが。
「あーもうほんっと可愛いすぎ!いっそこのまま組み敷いて、俺様のモノぶち込んでハメ倒しちゃいたいくらい……!!」
「ひっ……や、やだっ!やめてください……!!」
「あはー、さっきも言ったけど今日は本当にそんなことしないよ?……何より俺様、ちゃんの嫌がることはしたくないし?」
そう言って再び人当たりのいい笑みを浮かべるこの男は、今まさにこの現状こそが私にとって「嫌がること」だというのを理解出来ていないのだろうか?