第3章 ◇給料三倍、疲労は……◇
ーーそんで、旦那も台所に立って俺様と一緒にお弁当を作ることになったわけ。
いやー……だって三倍だよ?三倍。
俺様の給料、別に少なくは無いと思うんだけどもうちょい欲しいなーってとこ、あるじゃん?
「まずはどうすればいいのだろうか!!」
「んー……じゃあ、まず旦那は自分の手を洗って……その次は、野菜も洗ってくれない?」
「うむっ!!!!」
俺様が旦那に指示を出せば、旦那は力強く返事をして作業に取り掛かる。
……野菜を洗うだけなら危ないことなんてないし、旦那もちょっとやれば気が済むでしょ。
なーんて、思っていた俺様だったんだけどーーーー
「ちょっ、ちょっと旦那!!!!その洗剤で野菜を洗っちゃ駄目だってば!!!!」
「しっ、しかし!!これを使えば汚れが落ちると言っていたのは佐助ではないか!!!!」
「それは手とか食器の汚れ!!野菜は普通に水洗い!!!!」
「う、うぐっ……!!」
台所用洗剤で葉物を洗おうとしていた旦那を全力で阻止する俺様。
……給料は三倍だけど、疲れも三倍。
うーん、引き受けなきゃ良かったかもって物凄く後悔してる。
「とりあえず、これは俺様がやるから!!旦那は鍋を見てて!!」
「見てるだけなど物足らぬっ!!!!俺はもっと関わりたいのだが!!!!」
「い、いや、あのねー……」
「ならばこれはどうだ」
ヒュッと旦那に向かって、毛利の旦那が何かを投げた。
「これは……林檎……?」
「それで飾り切りとやらでもすれば良い」
「おおお!!それは昨日殿が披露した、あの兎や花を生み出す技の名……!!!!」
「……げっ……」
毛利の旦那、絶対わざとだよね?
一見旦那のために言っているように見えるけど、どう考えてもこの場を滅茶苦茶にする気満々だよね?
はー……ほんっと、どこの世界に言っても毛利の旦那は毛利の旦那ってことか。
こっちで初めて毛利の旦那を見た時、ちゃんに膝枕されてたから心境の変化でもあったのかと思ったけど…………
「うおおおお!!この幸村!!!!殿のため、飾り切りを全力で行う所存!!!!見ていてくだされ、お館様ぁああああ!!!!」
ーーやっぱり気の所為だね、こりゃ。
あー、もう……俺様知ーらないっ!!!!