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小さなお伽噺【BASARA短編集】

第2章 翡翠の花嫁(元就/狂愛チック/戦国)



ここから動いてはいけない
悲鳴の正体を知ってはいけない


冷や汗が頬を伝い、本能が警鐘を鳴らしているかのような気分に陥る私。


しかし、私の足はその悲鳴に引き寄せられるように進んでいき……気付けば、人集りが出来ている場所までたどり着きました。

ここが悲鳴の発生源なのでしょう。

ただ、ひとつ問題があるとすれば……



「……私の、家……?」




そう、発生源が団子屋だったのです。

私は中の様子を見るため、必死に人集りを掻き分け中へと入りました。




すると、そこで私が見たものはーーーーーーー





「……あっ……あ、ああ……」




荒らされた店内に飛び散る朱、朱、朱。

一文字三星紋の旗を掲げた沢山の兵士様と、身体に深々と刀が突き刺さったまま地に伏せる軍師様。

縄で縛られ、身動きが取れずにいる私の父と母。


そして、こちらに背を向けながら中心に立つ翡翠色の鎧を着る男性。
あの御方は、たしか……



「っ……毛利元就、様……?」



何故、毛利元就様がここに?

父と母は、軍師様は、なんで…………


不意に全く状況が把握出来ない私に気付いた一人の兵士様が、私に向かってしっしと手を払いました。



「下がりなさい。この団子屋は小国の軍師と手を組み、謀反を起こそうとしていたのだ」

「む、謀反……!!?そんな、有り得ません……私は……!!」



「」



凛とした声が、私の名を呼ぶ。

それは愛しいお侍さまの声でした。


しかし、妙です。
その声はとても近くから聞こえたのです。

まさか、お侍さまも店内に?

必死に辺りを見渡すも、お侍さまの姿は見えません。


すると、毛利元就様がくるりと此方へ振り返り……
その御尊顔が私の視界に映りました。

初めて見たはずの、毛利元就様の御尊顔。

しかし、見覚えあるどころか……愛おしさを感じる、そのお顔は……



お侍さま、だったのです。



「我はあの場で待てと言ったであろう、」



嗚呼、何ということでしょう。

お侍さまの正体が、毛利元就様だったなんて。


途端に身体中の力が抜け、その場に座り込んでしまった私。


すると、お侍さま……否、毛利元就様が私に近づいてこう囁きました。




「両親を斬り捨てられたくなければ我と共に来い」、と。

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