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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第2章 いなくなった親友 【灰原】


「……」
「……」
郁大と少年が見つめ合う。否、少年は郁大と目を合わせないように視線を逸らしていた。
「…この頃のは写真でしか見たことねーけど、そっくりだなー」
「だ…誰と…?」
「工藤新一」
「!」
びくっと少年の肩が震えた。決まりだな、と郁大が彼を見下ろしながら立ち上がる。
「ま、待つんじゃ郁大くん。この子はわしの親戚の子で、江戸川コナンくんといっての、」
「江戸川乱歩にコナン・ドイルか」
「な」
「確かそんな並びしてたもんな、本棚」
さすがは本を読みに通っているだけのことはある。少年―コナンは視線を逸らしたまま、冷や汗をかきそうな表情をしていた。
「新一が行方知れずになって一週間。そしたら隣の家に新一のガキの頃と瓜二つの子ども。偶然にしちゃ、できすぎてるよな?」
「……」
「なぁ、ここまでバレてんのに、だんまり通すつもりか?新一」
グクリ、と鳴ったのは、博士の喉だ。コナンはしばし黙って虚を見つめていたが、やがてふっと笑みをこぼした。
「やっぱオメーの推理も油断ならねぇなぁ」
「俺のは推理じゃねーっての」
「立派に推理だろうが」
観念した表情で、コナンが顔を上げる。
「なんでそんなことになってんのか、話してくれるよな?」
「……あぁ」
そしてコナンは語り始めた。一週間前にトロピカルランドで見たもの。口封じに殺される目的で毒薬を飲まされ、身体が縮んでしまった事。今は〝江戸川コナン〟と名乗り、蘭の家に世話になっている事を。
「…とまぁ、突拍子もねぇ話だけど、これが事実だ」
「…そうか」
ふーっと郁大が大きく息を吐く。本当に突拍子もない話だ。薬で身体が縮んでしまうなんて。
「まぁ、これで事情はわかったし。俺も気を付ける事にするさ。…何かあったら、言えよ?」
「バーロォ、お前を巻き込むわけには…」
「バーロォはお前だ、馬鹿。ここまで話しといて巻き込みたくないなんてさ」
「…郁大」
郁大はにっと笑ってみせた。
「親友の為だ。喜んで巻き込まれてやるさ」
「郁大…サンキュ」
郁大は内心ほっとしていた。行方知れずになっていた親友が、実は身近にいたから。状況は決していいものではないが、それでも死んだわけでも、知らないところで厄介な事件を抱えているわけでもない。厄介な事件に巻き込まれている事に違いはないが、それでも近くにいるのだから、守れるし、力になれる。その事実に、安堵した。

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