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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第17章 その言葉は、許さない【公安男】





ガタガタンッ



何かが崩れるような派手な音がして、徹夜続きで寝不足な男達は一斉にそちらを振り返った。そして、眠気なんてふっ飛んだかのようにぎょっと目を丸くして駆け寄った。
「千綾さん!」
「千綾警部!」
椅子か何かに足をとられたのか、床に物を散乱させて尻餅をついている上司の姿。風見は彼の前にしゃがみ、その虚ろ気な目を見ながら顔をしかめた。
「休んでください、千綾さん。さすがに休まないと、死にますよ」
言われた朔司は「あ゛ー…」と低い声を絞り出したかと思うと、ぽつりとこぼした。
「…いっそそれもありなのかもなぁ…」
直後。
ピリと張りつめる事務所内。だがそれは部屋の中からではなく、入口からであった。コツコツと小さく音を立てながら、その足音が朔司の背後に立つ。
「ふる、」
真っ青な顔の風見が彼の名を呼ぼうとしたが、彼は見向きもせずしゃがみ込むと、目の前にある髪の毛を鷲掴みにし、ぐいと後ろに引いた。朔司は「いて」とこぼしながら、反転した視界に映ったものに目をかすかに瞬かせる。
「れ…?」
「二度と」
鼻先がこすれそうなほど間近で目を合わせられる。真っ直ぐで怒りの炎を宿したその瞳に瞬きを忘れそうになる。
「二度と、そんな馬鹿な事を口にするな。心にも置くな。もしそんな事があれば、俺の手でその頭をかち割ってやる」
「………」
しばしの沈黙が流れる。やがて半開きのままだった朔司の口が、わずかに動いた。
「……………ごめん」
そして後ろについていた手から一気に力が抜けた。咄嗟に受け止めた降谷は、彼の様子を見てひとつため息をつく。
「降谷さん、千綾さんは…」
状況を見守っていた風見が恐る恐る降谷に訊く。降谷はまたひとつ息を吐いた後、腕の中の朔司を見て目を細めた。
「心配いらない。眠っただけだ」
「そうですか。よかった…。我々よりもさらに睡眠をとっておられなかったようなので…」
「…変なところで背負いこむからな」
言うと降谷は朔司を抱え、仮眠室へと連れて行く。簡易ベッドに寝かされて安定した寝息を繰り返す朔司にまた息をついた後、降谷はその場を後にした。




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