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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第2章 いなくなった親友 【灰原】


工藤新一が姿を消して、早一週間。幼馴染である毛利蘭は、数日前に電話で「厄介な事件に巻き込まれているからしばらく帰れない」と聞いたという。あいつらしいと言えばあいつらしいが、ここまで休むのは珍しい。本当に厄介な事件ならさすがに心配になってくる。なんて事を考えながら歩いていた鴉羽郁大は、ふと足を止めて顔を上げた。その目に映ったものを見て、はは、と乾き笑いを漏らす。すぐそこには、今案じていた親友、工藤新一の家がある。新一の両親は現在海外におり、今は新一1人で屋敷に住んでいた。新一が帰っていないなら、この屋敷の中には今誰も人はいない。郁大はしばし工藤邸を見つめた後、隣の阿笠博士の家に顔を向けた。
(阿笠博士なら何かしってるかな…)
蘭には心配をかけたくないからと話さなくても、博士になら状況を話しているかもしれない。郁大は足は自然と阿笠博士の家に向かっていた。







阿笠邸に一人で来たのは数えるほどしかない。郁大は工藤邸にある大量の本を読ませてもらうために合鍵をもらっており、その合鍵を忘れた時くらいだろう。しばらくしてガチャとドアを開ける音がした。声をかけようとして、正面に誰もいないことに、郁大は目を瞬かせた。
「…?」
「ゲ」
「ゲ?」
なぜかそんな変な声が下の方からきこえてきた。視線を落とせば、眼鏡をかけた少年が、そこにいた。
「子ども…?博士に孫なんて…」
「あっ、あっ、は、博士~!誰か来たよ~!」
「あっ」
言うなり少年はドアを開けたまま中へ駆けて行く。少しすると、入れ替わりに阿笠博士が出て来た。
「おお、郁大くんじゃないか。どうしたんじゃ?」
「いや…新一の事で、訊きたい事があってさ」
「し、新一の事でか」
なぜそこでどもった。郁大は先程の少年の態度と博士の挙動不審な様子を見て、ひとつの仮定を立てた。
「まさか、な」
「何がじゃ?郁大くん」
「失礼します、博士」
「あっ、おい!」
一言断りを入れて中に入り、先程の少年を探した。少年はといえば、ソファの陰からじっとこちらの様子を伺っていた。そのまま郁大は少年に近寄り、しゃがみ込んで彼と視線を合わせる。
「…」
「なっ…何?お兄ちゃん」
「…いや、だが…」
「…」
郁大はじっと少年を見つめ、観察し、そしてスッとその、眼鏡に手を掛けた。あっと少年が声を上げた時には、彼の眼鏡は郁大の手の中におさまっていた。
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