第8章 女優と探偵
「ねぇ、バーボン?あれ、どう思う?」
顎でみなとの方を指す。
そうですね、と顎に手を当て思案する様子を見せる。
その時、一瞬目が見開いたのを見逃さなかった。恐らく彼は彼女を知っている。「安室」として?「バーボン」として?
「彼女、見たところストーカー被害を受けているようですね。」
やはり誰の目から見てもその結論に至るか。
隣の男はまだ色々と考えているのか、怖い顔でみなとを見続けていた。
「そんなに魅入るなんて、何かあるの?」
「いえ、彼女は「安室」の友人でして。友人が困っているのであれば出来うる限りの手助けをする、それが「安室透」というだけですよ。表の職業柄、見過ごすわけにはいかないと言いますか。」
要は困っている人は見捨てない、面倒見のいい青年を演じている訳だ。
都合がいい。
「ねぇ?バーボン、いえ安室さんは私からの個人的な依頼は受けてくださるのかしら?」
「内容によりますが、最近は僕にもご協力いただいていますので、まずは要件を伺いましょうか?」
「とりあえず暫く尾行して頂戴。彼女付近で怪しい動きをしているものには容赦は要らないわ、煮るなり焼くなり好きにして頂戴。それが貴方への依頼。」
「ふむ、つまりストーカー被害に遭っている女性のボディガードのようなものですね?その程度であれば慣れっこですので、お受けいたしますよ。まぁ彼女と貴女の関係、これが報酬ということで。」
流石物わかりがいい、伊達に長く付き合っていないということか。
互いの秘密主義には深くは突っ込まず、利害が一致すれぼ協力する。ビジネスライクとしては申し分ない関係だ。
「私と彼女の関係、気になるかしら?まぁ焦らず追々教えてあげるわ。」