第8章 女優と探偵
Another side
「ねぇ、バーボン?あれ、どう思う?」
助手席に座る女からの質問で目を窓の外へ向けた。
何かに怯え、周囲を気にしながら歩くみなとの姿が目に入る。
最近彼女とは会えていない。
久々に目にした彼女は見るからにやつれていた。
それにしてもベルモットに目をつけられる行動はとっていないはずだ。
何故だ、何故彼女が目に留まったのか……
「彼女、見たところストーカー被害を受けているようですね。」
彼女を気にする様子を悟られてはいけない。
焦りは最大のトラップだ。
落ち着け、考えろ……
「そんなに魅入るなんて、何かあるの?」
「いえ、彼女は「安室」の友人でして。友人が困っているのであれば出来うる限りの手助けをする、それが「安室透」というだけですよ。表の職業柄、見過ごすわけにはいかないと言いますか。」
あくまでも「探偵」としての友人であることを強調しつつ、彼女を守る「言い訳」を連ねる。
「ねぇ?バーボン、いえ安室さんは私からの個人的な依頼は受けてくださるのかしら?」
隣の女から何かを思案する様子で問いかけられる。
「内容によりますが、最近は僕にもご協力いただいていますので、まずは要件を伺いましょうか?」
何か勘付かれたか……!?
落ち着いた声を意識しながら返答する。
「とりあえず暫く尾行して頂戴。彼女付近で怪しい動きをしているものには容赦は要らないわ、煮るなり焼くなり好きにして頂戴。それが貴方への依頼。」
「ふむ、つまりストーカー被害に遭っている女性のボディガードのようなものですね?その程度であれば慣れっこですので、お受けいたしますよ。まぁ彼女と貴女の関係、これが報酬ということで。」
その依頼はまるで「彼女を守れ」と言わんばかりのものだった。
都合がいい。
彼女を守る、そして彼女に会う口実ができたのだ。
断る理由もなく、了承をする。
それにしても気になるのは彼女がみなとを気にかける理由だ。
コナンくんや蘭さんを庇う様にみなとのことを気にかける訳があるのかもしれない。
しかし組織と関わりがあると知った以上、今後彼女に危険の及ばぬよう、より一層気をつける必要があるな。
「私と彼女の関係、気になるかしら?まぁ焦らず追々教えてあげるわ。」
人の気も知らないで。
焦る気持ちを抑えるように深くアクセルを踏み込んだ。