第2章 ✼藤✼
§ 叶多Side §
雷が体を包み込む一瞬、男の姿が見えた。
結の名前を呼んでいた。
結も謙信様と叫んでいた。
聞かなくても関係性が分かった。
(俺はこの二人を引き裂こうとしている悪役ってところか)
完全に嫌われただろうな…って考えながら目を閉じて
開けた先にあったのは本能寺跡と書かれた石碑。
隣に結は居なかった。
「他の所にタイムスリップしてんのかな…」
沢山悩んで決めた。結を現代に連れて帰ろうって。
だからわざと嘘を吐いた。
本当は今日なのに、明日ワームホールが出ると嘘を吐いて強引に連れ戻した。
「結…」
嫌われても良いよ。
恨んだっていい。
俺が結を裏切って現代に返したのは俺だから…。
だって、結には幸せになって欲しいから。
俺とじゃなくていい。
平和な所で誰かと笑ってくれてたらそれでいい。
それなのに変だ。
俺は自分がした事を少し後悔した。
「謙信様!」
そう叫ぶ結の声と顔が頭から離れなくて
もう結が心の底から笑わないような気がして
少し…後悔した。
「ごめん、結…幸せになって」