第2章 ✼藤✼
次の日は快晴で日差しが暖かい日だった。
「それじゃあ秀吉さん。行ってきます!」
「気を付けろよ。夕刻には帰って来るんだぞ」
政宗と作ったお弁当を持って、謙信様から頂いた髪飾りを頭に付けて城門を抜ける。
「どこに行くの?結」
辺りを見渡しながら少し後ろを歩く叶多も楽しそう。
「内緒だよ。叶多だってどこに行くか教えてくれなかったでしょ?」
今日は午前中私の好きな所に行って、午後は叶多の好きな所に行く約束をしている。
「もうすぐ着くよ!」
草むらを抜けて辿り着いたのは色とりどりの花が咲く花畑。
いつか、私もこの時代に来てすぐの時に見て感動したのを覚えている。
「綺麗だね…」
「でしょ?これを見せたかったの。それから、私がここに残りたい理由も話したくて」
「…うん」
二人で芝生に座ると、目の前で色とりどりの花が風に揺れる。
「この時代で凄く大切な人が出来たの。一人じゃないよ…信長様も秀吉さんも、皆私の大切な人なの」
「彼氏が出来たの?」
「………うん…」
安土の皆も越後の皆も大切な人だけれど、あの三ヶ月ではきっと謙信様がいなければ私は笑顔でこの時代とお別れをして現代に帰っていただろう。
だって…現代の友達や家族もこの時代の皆と同じくらい大切なものだから。
「結はその人の為なら何でも出来るくらい大好きなんだね。俺が何を言っても聞かないわけだよ」
苦笑を浮かべる叶多の顔は少し寂しげだった。
「叶多はやっぱりまだ反対…?」
恐る恐る聞くと、私の手首を掴んで叶多は歩き出す。
「それは次の場所に着くまで秘密」
さっき通った草むらを抜けて、城下を抜けて、連れてこられた場所は小高い丘の上。
見晴らしが良くて城下を一望できる所だった。