第2章 ✼藤✼
もはや声を隠そうともしない結は俺の前にありのままの姿を曝け出す。
今結は自分の事など考えていないんだろう。
他の何かを、考えている。
何故なら、結が自分の頬を伝う涙に気付いていないから。
涙を流しながら俺の体に縋り付いて泣き叫んでいる事にも…気付いていないから。
(何故泣いている……結…)
この小さな体に何を背負っているのか今の俺は知ることは出来ない。
故に慰める事も出来ないのだ。
ただこうして激しく抱いてそれを忘れさせる事しか出来ない。
「はぁっ…ああんっ……!謙信様…っ!」
結の中に直接欲を吐き出すと、俺に抱きつきながら結はそのまま眠りについた。
「結…」
結が初めてだった。こんなに愛し、大切にしたいと思ったのは。
だから分からない…こんな時どうすれば良いのか。
赤くなった目元を撫でると、ぴくっと睫毛を震わせる結。
明日にはまたこの腕の中から居なくなってしまう。
「安土には相談できる者が居るのか?結」
いつまでも傍において置きたいという今は叶わぬ願いを一人呟き、俺も褥の中に入った。