第2章 ✼藤✼
大切な奴が誰かは知らない。だけど俺が一番知ってるんだ。
結が誰よりも優しい事
優しいから少しの事ですぐ傷つく事
責任感が強くて自分を責めてしまう事
笑顔が一番似合う事も
だけど結は俺の話を聞こうとしない。
「私の幸せなんてしらないくせに!私は絶対帰らない!」
どれだけ涙溢れてもその決意だけは揺るがないとでも言わんばかりの瞳が俺に向けられる。
「結……」
その瞳に、その決意に、何を言っても無駄だと分かった。
だから俺は嘘を吐いた。
「分かったよ…」
分かってないのに、分かったと嘘を吐いた。
「四日後に帰るから。それまでにもう一度考えておいて。それで…」
三日後、帰る前の日に二人で話がしたい。
その時に結の気持ちが変わってなかったら諦めるよ。
嘘を、吐いた。