第14章 ✼黒種草✼
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花をくすぐるのは、甘い花の匂い。
「ん………謙信様…?」
隣で寝ているはずの謙信様の温もりを探そうと、腕を動かす。
だけどそこに謙信様らしきものは無く、その代わりに、くずぐったい感覚があった。
(何これ?草……?)
思えば風だってあるし、花の香りがするし、手を動かしてみると草むらのような間隔もある。
まるで花畑みたい。
でも、当然ながら天守閣に花畑は無いし昨日は謙信様と一緒に眠りについたはずだ。
寝起きの頭で考えることもできず、諦めて重い瞼を開ける。
「どこ……?」
目を開けた先には、一面の白と緑。
少しずつ視界が鮮明になってきて、目の前に広がる色が何なのか分かってくる。
「綺麗……」
今までに見たこともないくらい広大な花畑が広がっていた。
私が座っている場所は青
その先はピンク
その先は赤
黄色、紫……
全部同じ花なのだろうか。
あまりの美しさに暫く見とれていると、後ろから誰かの声が聞こえた。
「捕まえた!こんどは——が鬼!」
「——は本当に足が速いなあ。僕なんて全然追いつけないよ」
私の後ろは一面白の花畑だったらしく、そこで男の子二人が鬼ごっこをして遊んでいる。
でもそこには二人以外の姿は無い。
(お母さんとか居ないのかな?)
もしかしたら迷子になってしまってここに来てしまったとか?
でもこんなに楽しそうだし、そんな事はないだろう。
声を掛けようか迷っていると、男の子は私を見つけて不思議な顔をした。
「どうしたの?どうしてここに居るの?」
「え……?」
「まだだよ。もう少し待って」
「何のこと?」
どこかで会ったっけ。
でもこんなに綺麗な男の子、一度会ったら忘れるはずがない。
しかも二人。双子だろうか……とても似ている。