第14章 ✼黒種草✼
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「持ってきたものはこれだけか?」
「はい!これが最後です……!」
お城に着いてから、各自持ってきた荷物を整理したりして、気付けば日が暮れていた。
皆も新しいお城が楽しくてしょうがないのが、笑い声が天守にも届いていた。
「騒がしいな」
「いいじゃないですか。きっと皆さんも楽しみにしてたんですよ」
騒がしいと言いながらも、天守閣までの襖を閉めようとはしない。
謙信様と二人で暮らす天守閣は他の部屋とは隔離された場所だった。襖を閉め切ってしまえば、この笑い声も届かない。
でも、廻縁へと出ると、そこはこのお城の中で一番自然を感じられる場所。
風が心地よく、木々が音を立てて揺れるのと同時に、私の髪も波打つ。
その風は、真新しい木の香りを運んできてくれた。
「いい香りですね」
「ああ」
「私、ちゃんと謙信様の妻として立派な姿を見せられるでしょうか」
「心配いらん。何せ俺が選んだ女なのだからな。して、結」
「はい」
振り返ろうとした私の頭を引き寄せて、謙信様が触れるだけの口づけを落とす。
「この城でのお前の抱き心地を確かめたい」
「抱きっ……?!まだ皆さん下にいますしっ……!」
「あやつらにはやる事がおわれば今日は休めと言ってある」
「でもっ」
「佐助にもこの部屋には誰も近づけるなと言ってある。何、襖を閉めれば何も聞こえない」
ああ、これは何を言っても聞かないパターンだ。
そもそも私の体調が悪いせいで謙信様にはずっと我慢をさせてしまっていたし、ここで拒むのもちょっと申し訳ない。
「本当に、誰も来ませんか……?」
「今日はもう俺以外にお前の姿を見せるつもりはない」
それなら、と了承すると、謙信様は軽々と私を抱き上げて、そのまま部屋繋がる襖を全て閉めた。
先ほどまで聞こえていた喧騒が嘘のように、静かな時間が訪れる。
まるでそこだけほかの場所とは切り離されたように、謙信様の声しか耳に届かない。
その中で私たちは吸い寄せられるように口づけを交わした。