第14章 ✼黒種草✼
§ 結Side §
お城への道中、私は謙信様の馬に乗りながら穏やかな時間を過ごしていた。
大きく息を吸い込めば、花と緑の匂いがする。
「そういえば謙信様、お城の名前は決めたんですか?」
「いや……まだ決めていない。普通は土地の名前をそのまま使ったりするのだが……俺と結の城だ。意味のある名前にしたい」
確かに、お城と言ったら歴史で習ったのは熊本城とか大阪城とか……自分たちで考えるとなると中々思いつかない。
「いずれ城下も出来るだろう。そうなると早めに決めねばならんのだが全く思いつかん」
「住んでみると良い所も沢山見つかると思いますし、それからでも遅くないんじゃないですか?」
ずっと悩んでいる訳にもいかないけれど、謙信様が真剣に考えてくださるならそれも大切にしたい。
「まあ……そうだな」
そうこうしているうちに、お城の前へと着いてしまった。
城門をくぐった先にあるのは、何度見ても息を飲むほどに美しい白くお城。
家臣の方達も感嘆の息を漏らしていた。
「この城を俺たちが作ったのだな……」
「大工の手伝い程度だったが、こうして出来上がった城を見ると何とも言えぬ気持ちになるな」
謙信様から聞いた話だと、家臣の方たちは自分から率先して城を立てる手伝いをしてくれたらしい。
だから、ここは正真正銘皆のお城だ。
「結」
先に馬から降りた謙信様が手を差し伸べる。
私は、これから始まる新生活への希望を胸に、その手を取った。