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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第14章 ✼黒種草✼



§ 謙信#Side §


それから数週間後……


「では皆さん、今までありがとうございました!!」


「結様っ…ううっ……お元気で…」


「おいおい、永遠の別れでもないし近いだろ……元気でな、結」


「信玄様もお元気で」


「結様がお城に居ない生活なんて……ううっ…」


出発する当日、信玄とその家臣が見送りをしていた。
結はあちらの家臣たちに囲まれているが……まあ、今日くらいは許してやっても良いだろう。


「元気でな!」


「お前もな!甘味でも食べに行こうぜ!」


上杉と武田の者もなんだかんだで仲が良かった。
それぞれが別れを惜しむ中、信玄が俺に話しかけてきた。


「息災でな」


「ああ」


……認めたくは無いが、こいつと飲む酒は美味かった。
結と飲む酒も美味いが、それとはまた違う味の酒。


俺と信玄の城はそう遠くは無い。
だがすぐに行ける距離にあるとしても、
ここから見える景色も
人々の笑顔も
ここだけの物だ。


いくら戦狂いと言っても、民の生活を考えてこなかったわけではない。こんなに笑顔に溢れている城下を俺は作れるのか、と柄にもなく不安になった。


「暫くしてそっちの城にも城下が出来た頃に偵察にでも行くよ」


「城下、な……」


「大丈夫だ、きっとお前の所にもきっと笑顔が溢れるようになる」


少しでも弱い所を見せるとすぐにこの男はそれに気づく。
本当に腹が立つくらい人の事をよく見ている。


「要らん世話を焼くな。俺はそんな心配などしていない」


「ははっ、そりゃ悪かったな」


こいつとの距離がここまで近くなったのはいつからだろう。きっと結が来てからだ。
敵になるわけでも永遠の別れでも無いのに、色々な事を考えてしまった。


「そろそろ行く」


「ああ。……謙信」


「なんだ」


信玄は笑う。
人をからかう時の笑みでも満面の笑みでも無い、優しい顔で。





——幸せになれよ







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