第2章 ✼藤✼
「付けていただいても良いですか?」
薄紅色の胡蝶蘭を模した髪飾りを結に付けると、結は嬉しそう華のように笑った。
「こうしてずっと着けておきます。そうすれば会えない時でも謙信様を思い出せますから」
「愛らしいな、お前は」
どんなに綺麗な花であろうとも、結の前ではそれを引き立たせるものになってしまう。
それほどまでに、俺にとって結は美しいものだった。
──だからこそ、儚くもある。
美しいものであるからこそある日当然消えてしまうのではなないかと思ってしまう時がある。
もう結を喪う夢は見なくなったものの、喪うのが怖い事は変わらなかった。
「謙信様?どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
(不思議なものだ。結は死んだりしないと分かっているはずなのに)
俺はその存在を確かめるように、まだ熱い肌に赤い跡をつけた。