第2章 ✼藤✼
§ 謙信Side §
「謙信様!」
城門で結を待っていた俺の胸に暖かな感触が訪れ、胸がすくような結の香りが鼻をくすぐる。
「お会いできて嬉しいです、謙信様」
「ああ、俺もだ」
城の中に入りながら、今日の予定を立てる。
会える時間が減った分、一緒に居る時間が俺にとってかけがえのないものになっていた。
「今日は何処に行きましょうか?」
「お前も疲れただろうから暫くは俺の自室で休め。信玄から上手いと評判の甘味処を聞いたから後で行こう」
「はい」
自室に入ると、結は俺の隣にちょこんと座る。
「結」
「何ですか?けん…んっ…」
振り向いた結の頭を引き寄せて唇を掠め取ると、結は白い肌をたちまち赤くさせた。
「我慢していたのだ。これくらい許せ」
そっと肌に触れると、その手を俺よりも一回り小さな手が包み込む。
「……心臓が持ちません」
「口付けなど何度もしているだろう」
「それでもです」
結は赤い頬をそのままに、ふにゃりと笑う。
──それは多分、私が謙信様を好きすぎるからだと思います
「……っ」
(こっちの心臓も持たんな)
恥ずかしがりながらも、素直に気持ちを伝えてくれる結に愛おしさが募る。
「そのような可愛い事を言うな。止められなくなるぞ」
華奢な肩を優しく押し倒すと、少しだけ乱れた髪が畳の上に広がる。
「止めなくて、いい、です…謙信様に触れて欲しい」
「結……」
覆い被さるように二度目の口付けを落とし、俺達は肌を重ね合わせた……。
この後訪れる悲劇など、微塵も感じずに。