第2章 ✼藤✼
素で人を褒め、愛想も良い叶多はたった一日で安土の人気者になったけど、流石に未来から来たとは言えず、ひと月だけここに滞在する事だけを伝えた。
「暗くなる前にそろそろ帰ろう?」
城下の人達からも色々な物を貰ってしまい、帰る頃には夕日で空が茜色に染まっていた。
それは現代で見るものと同じなのに
高層ビルや視界を遮る建物が無いからか現代よりも綺麗に見える気もする
いつの日か、同じように夕日の中で出会ったばかりの謙信様と、同じ道を歩いことを思い出す。
その時は美味しいお酒を紹介するという口実を作り、謙信様と一緒に居たけれど今はそんな口実など無くても一緒に居られる。
それがとてつもなく幸せなことで、思い出すと謙信様に会いたくなってしまった。
「遅くなっちゃったね。でも仲良くなれたみたいで良かった」
寂しい気持ちを掻き消すように、踵を返して城への帰路を辿る。
(明日になれば謙信様に会えるから…それまでは我慢しなきゃ)
安土城に帰ると、そこには既に叶多の部屋が用意され、城の皆の熱い要望により歓迎の宴までもが開かれた。
そして次の日————