第2章 ✼藤✼
「佐助。いるなら出てこい」
信長様の言葉に反応したかのように天井裏からひょいっと佐助くんが現れる。
「佐助…入るなら大手門から入って来い。何故わざわざ屋根裏から入って来るんだ」
秀吉さんが呆れたように言うと、佐助君は地面に降りてきて軽く一礼をする。
「すいません。屋根裏が心地良いんですよ」
「佐助君、どうしてここに?」
「昨日予期せぬワームホールの出現を確認したから念のため来てみたんだ。そうしたらビックリ。タイムスリップして来た人がいるみたいですね」
「まさかそれだけを言いに来た訳ではあるまいな」
佐助君の表情に似合わない言葉も、誰もツッコもうとしない。
「勿論です。次にワームホールが来ると予想される日を伝えに来ました」
ポーカーフェイスを保ったまま、佐助君は叶多を見て軽く頭を下げる。
「天井裏からお名前は聞いていましたので俺の自己紹介だけしておきます。俺は猿飛佐助、君と同じで現代からタイムスリップして来て今は忍者をしています」
「宜しく……お願いします」
「早速だけど、次に君が帰れるのは約一か月後だ。それを逃すと次はいつか分からない」
急に真剣な話になり、その場はシン…と静まり返る。
「ここでの暮らしも慣れると楽しいからあまり気兼ねしないほうが良い。的確な日にちが分かったらまた伝えに来る」
そうして佐助君はまた天井裏へと戻っていった。
「はぁ…せわしない奴だな。結、叶多に城の中と城下を案内してやれ」
「はい」
「では皆戻って良いぞ」
そのまま叶多えお連れて皆の部屋とお針子仲間を紹介したりすると、叶多はその全てを興味深そうに見ていた。
「この着物の色、凄く綺麗ですね」
「そうなんです!呉服屋で一目惚れしてしまって…」
楽しそうに笑うお針子さんを見て叶多も優しく微笑む。
「とっても似合いそうです」
「え…あ、その…これは贈り物なので私は着ないんです」
よく見れば彼女の頬は赤く染まっている。
……なんか、
「このお団子美味しい!今まで食べた中で一番美味しいです」
「お…っ、そ、そうかい!ありがとな兄ちゃん!」
………なんか、
秀吉さんを上回る人たらしぶりを発揮している気が…