第2章 ✼藤✼
「待て、そう急ぐな。話はまだ終わっていない」
「え……?」
「置いていても利益にならん駒は要らん。故に俺の利益となれ、叶多」
(利益って言われても……)
今さっきこの時代に来た人が何を持っているのだろう。
困惑する叶多の顔を見ながら信長様はニヤリと笑う。
「貴様はここにいる奴らの手伝いをしろ」
要は仕事をしろと言うことだ。
「この城には聞けば貰える仕事が沢山あるからな。俺の為になれ」
まぁ確かに……
三成くんは書庫の整理をお願いするかもしれない
政宗は料理が好きだからその手伝いをお願いするかもしれない
秀吉さんも世話焼きだから城に馴染めるように人と関わる仕事をお願いするかもしれない
家康は…分からないけど
こう言ってくれるのも信長様なりの優しさなのだろう。
「どうする、叶多よ」
叶多が迷ったのは一瞬で、直ぐに信長様に向かって頭を下げた。
「やります。ここに俺を置かせてください」
昔からそうだったけど、叶多は適応能力が高い。
慣れない事も新しい環境にもすぐ慣れてしまう。
「では決まりだな。軍議にはお前も連れて行く。無論結もだ」
叶多も着物に着替えて、皆の前で暫く安土城に住まわせることを説明した。
勿論信長様が決めた事に逆らうものは一人も居なかった。
そして次の日、私のタイムスリップの事を知っている武将を集めて、叶多の事情も伝えた。
「叶多か。確かにこの時代じゃ聞かない名前だな。俺は伊達政宗だ」
「結の旧友で現代から来たなら敵の参謀でも無さそうだな。俺は豊臣秀吉、宜しくな」
「石田三成です。叶多様、宜しくお願いします」
「ククッ…これまた面白そうなのが来たな。明智光秀だ、宜しく頼むぞ」
「……徳川家康」
それぞれ自己紹介を済ませると、叶多は唖然として皆を見つめる。
「本当に勢ぞろいしてるんだね。驚いたよ」
まさか教科書に載っているレベルの戦国武将を直に見られるなんて思っても見なかったんだろう。
実際私も凄く驚いたわけだし。
最後に信長様が天井を見つめて言った。