第2章 ✼藤✼
「結と佐助に続き三人目か。ここまで来ると大して驚きもせんな」
信長様は私の後ろにいる叶多を見据えながら、自分の前でトントン、と床を叩いた。
(座れって事だよね…)
二人で信長様の向かい側に正座をすると、信長様は叶多を見て真剣な顔で問う。
「五百年後の未来から来たそうだな。貴様、名は?」
「水野叶多、です…」
「ククッ……結が初めて俺と話した時によく似ているな」
「……どういう事ですか」
「まるで子犬のように肩を竦(すく)めて目を合わせるにも怯えているようだからな。貴様にそっくりだ」
「……」
(それは…そうかも知れないけど…)
否定しようにも出来なくて口ごもってしまう。
ホトトギスを殺すタイプで知られている人を目の前にして好き勝手言える現代人なんてそうそういないだろう。
「して、要件は?大体わかってはいるが俺も暇ではない。手短に話せ」
言われて初めてそろそろ軍議の時間だと気づいた私は急いで口を開く。
「先程もお話した通り、叶多はタイムスリップをして来たのでこの時代には仕事も住む所もありません。だから次のタイムスリップまで安土城に置いていただくことはできないでしょうか?」
この状況では一番良い考えなはず。
後は信長様が受け入れてくれるかだけど……
「結と違って幸運を呼ぶ者でも無さそうだからな。置いておくつもりはない」
「信長様っ……」
正直見ず知らずの男一人を急に城に置いてくれなんて頼むのもおかしな話だ。
だけどここ以外に頼む先も無い。
何とか説得しよう…そう思った時、信長様が私の言葉を遮って話を進めた。