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月下香の蛇

第1章 始まりと夜


「食事、貴方も必要なんでしょう?」
陸奥守に問えば
「必要になるがかもなぁ」
なんて曖昧な返事。
「食材はあるんでしょ?」
こんのすけに問えば
「勿論です!」
こちらは頼もしい返事。

陸奥守とこんのすけを広間へ残して一人厨へ。
冷蔵庫とか電子レンジとか、
本丸には合わない家電が並んでいるが、
無ければ不便なのは良く分かっている。
冷蔵庫を開けてみれば、様々な食材。
適当に手を伸ばして、簡単に作れるものを準備する。

料理は嫌いではない。
でも、それは自分のためにするから楽しいのであって
他人に振る舞う事に喜びは感じない。
何故なら、私の好み通りに料理を作るから。
それを食べて文句なんて言われた日には、
その相手を私は絞め殺すだろう。
心が狭いと思われても構わない。
そもそも私は寛大な人間ではないのだから。

簡単な料理を作って広間へ持っていけば
食事ができるようにと卓が準備されていて、
二人分の食事と、こんのすけ用のお揚げを並べると
「主は料理が上手ながか!」
陸奥守は嬉しそうに声を上げた。
「食べる前に感想言うのね」
少し呆けて返せば
「こがーに綺麗な料理なんやき、不味い訳がない!」
と、彼なりの理論が。

手を合わせて食事を開始する。
陸奥守にとっては生まれて初めての食事。
陸奥守は一つ一つ料理について私に問うた。
これは一体どんな食材を使っているのか。
どんな味付けをしたのか、調理をしたのか。
それら一つ一つに答えながらの食事は
思ったよりも時間がかかったけれど、
彼は全ての料理に対して何かしらの誉め言葉をくれて、
悪い気はしなかったのは事実。

食事の後、片づけを手伝ってくれた陸奥守。
湯あみをして今日は休むようにと勧めると
「主も早よう休め」
そう言って、私の頭を撫でて風呂へと歩いて行った。
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