• テキストサイズ

月下香の蛇

第2章 演練と狐


「よ、」
夕食も済ませて、部屋に戻る。
雑用を終わらせて風呂にでも入ろうと思っていれば
三日月がやって来た。
「何かしら」
「あまり、小狐丸を苛めないでやってくれ」
「苛めた覚えはないけれど」
「そうか」
けほけほと笑いながら離れから去って行く三日月。
彼が去ってしばらくもしない内に
「失礼します」
小狐丸はやって来た。

「何か?」
雑用を片付ける手を止める事もしないまま返事だけをする。
「ぬしさま、」
小狐丸に背を向けているから彼の表情など分からないけれど
近寄ってくるのは気配で分かった。
「ぬしさま」
呼ばれてひしと抱き着かれた。
腕に力を込めているらしく、私は身動きが取れない。
「何の用?」
小狐丸の腕の中から出ようともがくけど
力の差は歴然。

「ぬしさまにこの小狐丸の匂いをつける事にしました」
スッと顎を持ち上げられて、口づけられた。
口づけというよりも噛みつかれていると言った方が適切な気もする。
くちゃくちゃと音を立てながら
私の口内を乱した小狐丸は
銀色の糸をひきながら唇を離してニヤリと笑った。
「さま、
小狐丸は野生ゆえ、手加減は致しませぬ」
いとも簡単に抱き崩され
私たちの周囲には片付けようと思っていた本が散らばった。
「ねえ、風呂にすら入ってないんだけど」
「構いません。
全て私の匂いに書き換えますゆえ」
何が構わないのか、私には理解できなかったが
私が思考する間も与えず小狐丸は私の首筋に噛みついた。
ガシガシと甘噛みを繰り返すと
噛んだ場所を舐め、吸い上げて跡をつけていく。
/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp