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月下香の蛇

第2章 演練と狐


演練を終えて本丸へと帰る。
本丸に居る者たちで昼食をとり、
遠征や出撃の迎えをして、各隊の隊長から報告を聞いて。

審神者としての事務仕事にも慣れた。
長時間座っている事を苦痛に感じるタイプではないのは有難い。

「ぬしさま」
時計の針は午後三時を指している。
短刀たちのはしゃぐ声がするのは、
おやつの時間だからだろう。
「何?」
「休憩にいたしましょう」
障子を開けて部屋へ入って来た小狐丸の持つお盆には湯飲みが二つ。
「失礼いたします」
卓の上に湯飲みを並べて置くと、座布団の上に座った。

湯飲みの茶を飲み干すまで、お互い無言のまま。
何か用事があるのだろう小狐丸は、
時折私の方を伺うように見るけれども、言葉にできないようだった。
そんな様を見ながら、気付かぬふりをする。
空になった湯飲みを卓へ置くと
「ぬしさまは、宜しかったのですか?」
小狐丸が口を開いた。

「何の事?」
「あの男の事です。
ぬしさまはお気づきになられていたのですよね?
にもかかわらず、されるがままだった」
「害は無かったわ」
「あのような事をされて、害は無いと仰るのですか」
私を咎めるような瞳で小狐丸は続ける。
「私は我慢なりません。
ぬしさまに他の男の匂いがつくなど、許せません!」
小狐丸の口調が荒くなった
かと思えば
「私は、私の想いはご迷惑ですか…」
尻すぼみの言葉でそう言うのだった。
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