第8章 大阪城攻防戦 ~ 一期一振のキモチ ~ 上
監査官「・・・・・・」
「・・・・・」
まだ、暖かさの残る風に誘われるようにと監査官はそこに佇んでいた。
「・・・・・・」
監査官「・・・・・」
何かを言おうとして追いかけたはずの言葉たちが風に乗って散っていく。
“ありがとう”も“ごめんなさい”も
どちらも見当違いなような気がして。
(不思議だな・・・)
なにか言わないといけないと思う反面、何も言わないこの空間がとても心地良い。
無言の関係。
(あぁ・・それが私達の根源だった気がする)
私に記憶がなくても。
彼が黙するのなら、私達の関係はまだ終わっていないんだと思う。
記憶を取り戻すことはきっと彼にとっても私にとっても優先的なことじゃない。
もし優先させるのなら、真っ先に一期一振の任務を私に与えればいいだけだ。
それをしないで待っていた。
それはなぜ?
「・・・・・」
監査官「・・・・忘れないように」
静かに風に乗って、耳に届く声。
何を?
・・どれを?
そんな質問は愚問なんだろうな。
「・・・・大丈夫。私は変わらない!」(グッ)
例え記憶が失くしても。
袖口に隠れるように力を込めた拳。
その様子を見ていた監査官が、薄っすら微笑む。
監査官「・・・・・あと毎回しつこく申請してくるが、審神者自身による刀の使用は厳禁だ」
「はぁあ!?ちょっとくらい使いたいんですけどっ!!」
監査官「別にお前がやらなくても刀剣男士がいるだろ」(フンッ)
「戦力なら少しでも多いほうが良いと思いますーっ」
監査官「・・・話は以上だ」
「ああぁあー!!また話ぶった切ったぁあああ!!!」
監査官「忘れずに面を持っていけよ。万が一、他に見つかると厄介だからな」
「えー。あれダサいから嫌なんだけど」
監査官「死ぬほどどうでもいい理由だな」
監査官「・・・あと、もし隠れて使うなら3分以内だ。手荒くするなよ?」
「・・・っ!だっ大事に使うよ!!ありがとう!!」