第7章 大阪城攻防戦 ~逆心を宿すモノたち~
「・・正直、少し予想外の指示だったから驚いている。静観ってことは何もしないってことなら、あなた達はここで何をしているの?」
まだ少し余韻の残る頭を振り切るように、髪をかきあげる。
骨喰「それは俺たちにも分からない。ただ、ここにいれば外敵から見つからないっていち兄が言っていた」
小夜「・・・見つかってはいけなかったの?」
骨喰「・・たぶん。ただ、その外敵が時間差行軍だけを指すのか、審神者を指していたのかは俺たちにも分からない。聞いても曖昧に話を逸らされてしまう」
薬研「・・目覚めた時も、少し考え込むようにしている姿をよく見かけていたからきっといち兄もなにか迷っているような気がして、俺たちもあまり深くは聞けなかったんだ」
「・・・・・」
断片的に脳裏に見知らぬ光景が浮かぶ。
若葉のような明るく鮮やかな澄んだ青色をした髪色の青年に隠された、少し物悲しげさを宿した瞳。
(あれはいつも何を思って、何に憂いていたのか・・・)
優しすぎるがゆえの苦悩。
兄としての尊厳。
護るべきものがあるという強さ。
―――それ故の弱さ。
弟たちに話さない、ということはつまり彼自身だけの問題ではないということ。
そしてそれはきっと他の刀剣男士ではなく、審神者。
私に関する事柄。
それなら――。
「・・・・一期一振に直接話を聞きに行こう」
鯰尾「え?でもいち兄は目覚めないって・・」
「うん。それはきっと私が原因になってる」
加州「・・・一期一振は主の記憶を奪った張本人、だっけ?」
「どう記憶を奪ったかはまだ分からないけど、私が行けば必ず一期一振は目覚める」
ざわざわと心が騒ぐ。
その先に一期一振がいる。
これは予想じゃなく、確信。
「・・・私達が敵になるか味方になるかは、一期一振が起きてからでも遅くはないんじゃないかな?」(ニコッ)
薬研「いち兄が目覚める・・・」
小さく吐かれた言葉は、宙を舞い。
粟田口の瞳には確かに強い意志が宿った。
=つづく=