第9章 大阪城攻防戦 ~ 一期一振のキモチ ~ 下
堀川「・・・分かっているとは思うけど、主が望んでーー」
加州「主が望んでないのくらい分かってるよ、堀川」
皆が静かに私の話を聞いている。
揺らいだり、戸惑ったり、悲しみに満ちていたり、
怖がっていたり、怒っていたり――-。
ひとりひとりの顔を見て、それぞれが自分なりに受け止めてくれているのが分かる。
『・・人は迷うから強くなれるんだと思う』
ふと、脳裏に加州の言葉が蘇る。
『迷って、考えて、それでも前を向いて行こうとする。その先が間違ってるか、正解かなんて誰にも分からない・・・でもさ、そんな不安を抱えても生き抜く人を俺はすごいと思ってるんだ』
人ではない刀剣男士たちが、自ら考えている。
ただあるがままを良しとして、存在していたモノたち。
それを良しとせず、己の意志を持てと訴える私は、もしかしたら付喪神である彼らを穢している行為なのかもしれない。
『大丈夫だよ、。どんな時でも俺が・・いや、俺たちがの傍にいる。だからさ、一緒に考えて悩もうよ・・。ね?』
ねぇ、加州。
記憶が戻っても、私は何千回も同じ答えに辿り着いてしまうの。
「・・・・・・」
瞳を閉じて、ゆっくりと深呼吸をする。
まっすぐ私を見つめる揺るぎない黄金色の瞳。
表情には表れないのに、瞳の奥には静かに怒りの色を宿していた。
「・・・一期一振。貴方が私のその行為を認めていなかったのは分かっていたよ」
貴方が何度も私を制し、真の道を指し示してくれた。
私が過ちを犯さないように。
心が安らげれるように。
全部分かってた。
分かっていて、私は一期一振の意に背を向け続けた。
一期一振「・・・心外ですな。私は主に忠義を誓っております」(ニッコリ)
だから、目が怒ってるんだってば。
わざと隠してないでしょう?
「加州」
手を差し出すと、加州はなにを言わなくとも意図した物を渡しの手のひらに置く。
加州「はい、主」(ポンッ)
手のひらには、小さな黒地の御守り。
それを刀の鍔に結ぶ。