第9章 大阪城攻防戦 ~ 一期一振のキモチ ~ 下
ずっと。
お慕いしておりました。
「まさか貴方がくるなんて・・・」
そう優しく微笑まれた主の面影が、とても儚げだったのを覚えている。
真っ黒な衣を羽織り、鬼の面を頭に乗せ、いつもとは違う姿で立っていた。
その背後に禍々しい氣を帯びた複数の時間遡行軍。
一期一振「・・主、その者たちは?」
なにかを隠しているのは分かっていた。
けれどそれは私達を裏切るものではない、と。
勝手にそう思っていた。
「答える義理はありません」
弟や一部の者の姿見えなかったから、屋敷内を見回りをした。
そんな何気ない行動だったはずなのに。
「・・忘れなさい。他言することは許しません」
連想させる。
居なくなった者たちの背丈と、目の前にいる時間遡行軍の背丈が。数が。
一致する。
一期一振「・・・・ッ」
怒りにも似た激情が身体の中から湧き上がるのに、胃のあたりの疼きが冷水のように激情を殺してしまう。
(・・・本当は、こうなることを分かっていたのかもしれない)
ただ、それを知りたくなくて目を逸していた。
選択肢から排除していた。
一期一振「・・・それが主の、真の道ですか?」
「・・・・真の事だけを出来たなら、人は誰も苦しまずに済んだでしょうね」
バンッ。
翁の開いた音と同時に主たちの姿も闇に消える。
一期一振「・・・貴女は、真の道すら許されないというのですか・・・っ」
知りたい。
貴女の事を。
そう、初めて思った。
冷たい声音で話す貴女も。
柔らかい笑顔を零す貴女も。
寂しそうに、月夜を見上げる貴女も。
心身共に、貴女と居られるように--。