第12章 What's your name?
赤と白のストライプの外装が特徴的なベーカリーは、朝早くから大繁盛。
看板商品は焼き立ての山型の食パンに、種類豊富な各種マフィン。
香ばしい麦の香りと甘い香りが朝から食欲湧きたて腹を鳴らさせる。
「ありがとうございました〜」
丁寧な見送りを背に片手で荷物を抱えれば、可愛らしい異国の子供の為に陽気なベルを従えて親切な老紳士がドアマンに早変わり。
笑顔で礼を返せば上品なマダムも笑顔でサヨナラ。
「【いつもの】も買ったし早く戻ろっと、あ」
人が行き交う大通り。
開店前のアイス屋が目に飛び込む。
ガラス張りの店舗は夏を余すことなく堪能して終わりませんか?と、今なら2段が3段になると張り紙で宣伝していた。
しばし足を止めて眺めれば思い出す人影1つ。
「……約束、だもんねぇ♪」
鼻歌交じりの帰り道。