第12章 What's your name?
昔からゲームはあまりしたことが無い。
唯一ハマってやった事があるのは、オールマイトをキャラに追加した昔から大人気の格ゲーだけ。
ただそのゲームも上手く動かせなかったらオールマイトが負けてしまうのでやらなくなった。
室内で遊ぶ子供が増えたご時世。
屋外で遊ぶほうが多かったのは、好奇心旺盛な幼馴染とオールマイトを筆頭としたヒーローの活躍のおかげだ。
―――だから分からないんです。
用事は済んだはずの頭は掴まれ、何故か髪に顔を寄せられているこの状況。
「あー、やっぱあれだな。こんな小さくてもすっげぇ匂い移るんだな」
❦イベント発生❦
▶A、頬を赤らめて受け入れる
B、押し返して逃げ出す
C、とにかく殴る
D、固まる
オールマイトの動画の合間でたまに流れるCMのシュミレーションアプリの映像が「私がきた!」ばりのテンションで頭に流れ込む。
こんなの現実じゃおきないんだろうなと思ってたのに、ナチュラルなその行為は緑谷の体を強張らせるには充分だった。
(え、これは……あり、なの……かな?あれ?芦戸さん葉隠さんならキャーって思ったりする事なのかな。いや、海外スタイルなのか?でも結構男の僕でも匂いを嗅がれるって恥ずかしいんだけど、とりあえず世間一般ではどうなんだこの状況……!!?)
直立不動のまま小刻みに緑谷が震えだすと、はっとして悪い悪いとウェンウィルは離れた。
ついイチと同じ扱いをしてしまったと、大きな手を合わせて分かりやすく謝罪のポーズをとっている。
あくまで気が向けば、イチの髪を乾かしてやる事がしばしばある。
だからだその…と説明するその口調は何時もより早口で。
「あー……なんだ、3年近くも世話してると、だからだな……くそっ、いらねぇ事まで話したな」
ボソッと呟いて、とにかく女子にやったらマズいから気をつけないととも付け加えた。
普段とは違う意外な姿は照れからか。加えて意外に甘党だったりするのを思い出したら少し笑ってしまった。
「なんだよ悪かったって、笑うなよ」
「いや、ははっ、すいません。なんだかうらっ…」
「うら?」
「なっ、仲良しなんだなって!!はははっ……」
不自然極まりない。
だけど声にするは違う気がしたんです。