第16章 血生臭い足跡
【爆破】の個性は強個性、
だがあくまでも体は生身の人間と変わらない。
言ってしまえば相澤の【抹消】みたいな個性にあたれば、たちまち【発動型】はただの人間になる。
だからこそ『個性に頼らない戦闘』が必要不可欠であり、ヒーローは基本体術を身につける必要がある。
例え強力な個性を持っていようとも、どんな時でも己の身が1番の武器になる。
そしてその瞬間が訪れた時、弱くなった心を支えるのは他でもないそれまでの日々なのだ。
口を塞がれた数秒、無駄に絡められる舌はその鉄の味を口内に擦り付けた。
反射的に喉を動かした数秒後、喉は焼ける程熱くなり、それは内部へ続き腹部ついては足先まで満遍なく熱くさせた。
しまいにはやたらと鼻につく塩素の匂いや植物の香り、普段より狭く感じる視野。
そして何より耳に届く音の異常さは群を抜いていた。
木々の微かに揺れる音、虫の羽音はもちろん離れた先にいるイチの吐息まで直ぐ横で聞いてるかの様。
脳が様々な音で占領されていく。
世界はこんなにも音で溢れているのかと、否が応でも思い知らされるが、動揺を悟らせはしない、それが爆豪にできる僅かな抵抗であった。
(…ッんだよコレ)
プールを跨いでる距離でも難なくその声は聞こえた。
それはもう、不愉快な程に。
「なにかしたっていうか……ご機嫌いかが?」
シンプルな質問だ。
そんなもの考えるまでもない。
「最悪だ、クソが」
第16章 血生臭い足跡