第2章 白米ってうまいよねー
程なくして緑谷も飯田と共に食堂に来ていた。
先程からキョロキョロしている緑谷に飯田はどうかしたのかい?と尋ねる。
「いや、あのイチく……イチって何処に行っちゃったのかなって思って。授業終わったら居なくなっちゃってて」
特に意味はないが、あまり人を呼び捨てにしない緑谷の呼び方に飯田は珍しさ感じた。が、意味がなさすぎてすぐ考えるのを止めた。本当に脳内を掠めたくらいなのだ。
「校内見学に行ったんじゃないか?
今は特に厳しいが、元々生徒と関係者じゃない限り一般の人は入れないからね」
飯田の言う様に、体育祭や学園祭などの催し物でも無い限り一般客は雄英高校には一歩でも入る事が出来無い。
現に事件のあった翌日などマスコミ(通称マスゴミ)が連日押し寄せるが、全ては鉄壁の護りを誇る「雄英バリア」に阻まれる。
「そっか、そうだよね。珍しい施設いっぱいあるし、でも広いから迷子にならなければ良いけど……あれ?」
目線の先に見たのは、赤と白の髪をしたクラスメイト轟焦凍。と、小さな子供。
2人はメニューの前に立っていた。
「みて、あの子轟くんにくっついてる〜」
子どもの部外者が珍しいのか、何にしても轟と一緒だから一層目立つのか。
周りから様々な声があがっていたが当の本人達は気にもしていない様にみえた。
どうしたのかと話しかけると「知らない内にくっついてた」と轟。
【迷子】
瞬時に察したが、緑谷と飯田はあえて指摘するのをやめたのだった。
轟と並ぶイチは最初の印象よりも小さく、やはり端正な顔立ちをしていた。
さほど変わらぬ歳なのに幼く見えるのは、どことなくあどけなさの残る雰囲気のせいだろうか。
小学生が中学生に、中学生が高校生に。
それだけなのに大人になったと錯覚する言葉の持つ力。
それにしても他の生徒ではないが、つい目で追ってしまう。
肌の色は第一印象と変わらず白く、こちらを見上げる大きな瞳は青く暗めの複雑な色をしていて、左目の下にはホクロが2つあった。