第2章 白米ってうまいよねー
話を聞くと校長と話があるから食堂で食べてくる様に言われ、迷った所で轟にくっついて来たと言う。
流暢ではないがスラスラ話す幼い子供に、飯田が感心した事を伝えると、勉強好きなんだとイチははにかんだ。
「ショート、これなに」
すっかり轟に懐いたのか、イチは轟の服の裾を掴んだままメニューを指差していた。
ちなみにヒーロー名呼びではなく、イチ曰く本名として呼んでいる。
「白米(はくまい)」
「白、米……?」
「ライスの事だな」
「ライス!……メニューはライスばっかりなの?」
「最終的に白米に落ち着くらしいな。俺は違うけど。あ、蕎麦もあるぞ」
「そば?」
プツプツときれる会話を横で聞くのも楽しいが、時間もないので緑谷は合いの手を入れる事にした。
「ランチラッシュ先生は白米が好きなんだ。好きなのを言えば大体作ってくれるよ」
そう教えるとイチは「じゃあ同じの食べる」と言って蕎麦とカツ丼を頼んだ。
そんなに小さい体で食べきれるのかと2人は心配したが、大丈夫だと笑った。
トレイに乗った食事を嬉しそうに見ているイチを食事に誘い席を探すと、先に食堂にいたお茶子達に声をかけられた。
人が少ないからか、皆で固まって食事をとっていた。
いただきます、と言って食べ始めた轟を真似て食べ始めたイチは始終美味しいと言いながら食べた。
箸の練習したんだと言ったが、やはり蕎麦をすするのは難しいらしい。
それでも食事をしながらの会話は弾んだ。
フリースクールに通っていて、休み関係なく好きに行っている事。
今回は面白そうだからついてきた事。
母親似かは自分ではわからない事。
痛いのは嫌いだから観るのが好きな事。
皆の名前と顔は事前に覚えてきた事。
だからショートに会えてラッキーだったよと、子供らしく笑う顔にはエクボが現れる。
人見知りと言っていたけど、意外と違うかもしれないなと、カツ丼を頬張りそんな事を緑谷は思っていた。
食事を終え「探検してくる」と、イチは手を振りながら先に居なくなった。
程なくして(午後も頑張るかー!)そう思いながら皆が席を立ち始めると「ちょっといいか」と轟が話を切り出した。
前触れもなく話しかける事も珍しいが、それ以上にその表情が真剣な事がザワザワと空気を揺らした。