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シュガー・クッキー【ヒロアカ】

第10章  追熟の世代




 体育祭からUSJ、職場体験、ヒーロー殺し、合宿、爆豪救出、平和の象徴【オールマイト】の引退。
 雄英に入ってからの数ヶ月。
 ノンフィクションにしては、些か詰まり過ぎてるのは【そんな時代】だと言ってしまえと世間は言う。

 母の個性は氷。そのせいか常に体温は低く、手は何時もヒンヤリとしていた。
 その手で顔を包まれるのは心地よかった。
 だけどそんな手が自分を庇う時だけ熱くなる。
 そんな事ばかり、よく覚えている。 

 母を追い込み、家庭を省みないあいつ(父)を心底憎んだ。
 【半冷半燃】薄汚い欲が生み出した個性。
 こんな物(炎)無くてもNO.1になれる。
 ずっと、そう思ってた。
 


 
『轟君って何か雰囲気変わったよね』



 ある日を境に他人にまで伝わる、自分の変化。
 見返す事だけ考えて挑んだ体育祭。
 体をボロボロにしながら、同級生は今も頭の中で叫ぶ。


『君の力じゃないか!』


 辛いだけの過去じゃない。
 自然と、病院へ足が動いた。
 10年ぶりに見た彼女(母)は歳を重ねていて、胸の内を伝えると思い出の中と違う涙を流した。

 この人を救いたい。

 憎しみに囚われ忘れていた言葉。
 

 『焦凍は、なりたい自分になっていいんだよ』


 そうだ
 お母さんは穏やかに笑う人だった。






 クセになった感情は直ぐには抜けない。
 名前を聞くだけで苛立つ事はなくなったが、脳裏に浮かぶあの日々は無くなりはしない。

 それでも職場体験をエンデヴァー事務所にしたのは、ヒーローとして学ぶ事はあると考えたからだ。

 父親であるエンデヴァーとの確執は消えない。

 だからこそ、思う。

 (憎しみに)燃える心は氷が冷やし、(哀しみに)凍った心は……どうなるのだろう。




 あの頃から気持ちは変わらない。

 無意識に握っていた掌から力が自然と抜けた。
 熱を持ったそれは外気に晒されひやりとして一瞬で消えた。
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