第10章 追熟の世代
切島が申し訳なさそうに答えると、イチは「むずかしいんだね」と、だけ呟いた。
「じゃあ、もう聞かない。
でも、せっかくだし、コレは聞いていい?何でヒーローになりたいの?」
「おっ、何かその手の話すんの初めてだよな。
何でなりたいのかかぁ……。そうだなやっぱあれだな。
俺「紅頼雄斗(クリムゾンライオット)」っていう、すっげえ漢気溢れるヒーローを目標にしてんだ」
「おとこ……ぎ?」
「おう!「心に漢気があれば、個性なんて関係ねぇ」俺と似た個性持って命がけで戦うんだ。
俺は、あの人みたいになって、後悔しねぇ生き方をして、守れるヒーローになりてぇんだ!」
グッと握った右拳を前に出すと見えるギザ歯が更にその言葉を強調した様に見えた。
イチは嬉しそうに語る切島の右拳に自分の拳を合わせると「カッコイイね」と短く返した。
「イチは?」
「んっ?」
「ヒーローになりたいって思ったりしなかったのか?
海外こそヒーローって沢山いるだろ?昔の本とか見ると元々ヒーロー文化の本場だし、憧れたりしなかったのか?」
「うーん……ヒーローになりたいと思ったこと無いかな。ただ強くはなりたいかな」
「そっか、俺がイチみたいな個性持ってたら、多分だけどヒーロー目指すけどな。
でも、まぁ皆色々なりてぇもん違うし。
だけど個性使える職業って限られるし、勿体ねぇ気もすんな」
「ふーん、そうなんだね」
「アッチ(外国)じゃ違うのか?」
「多分、一緒だと思う。でも、誰でも使っていいんじゃない?って思ってるから場合によって個性を使っちゃいけないとか、そういうのがよく分かんない」
「そう言われると元も子もない感じだな」
「だって、自分のだし。
それに何で他人を救けられるの?下手したら自分が死ぬかもしれないのに」