第10章 追熟の世代
「……ッうあぁっしゃぁ!!」
自主練場はシンプルだ。
他の施設とは違って俗にいう、スポーツジムの造りになっている。広さはサッカーコート位だろうか。
基本の筋トレ器具に、週替りで難易度が変わるボルダリングなど、基礎体力をあげる為の仕様になっている(TVでやってる筋肉を競う番組みたいな装置もあるよ)
ちなみに個性の仕様は自由だが、室内で使用する場合は
「お(お金かかるから)は(破壊)し(しないでね♡)」
の、標語を心に止めるのを忘れてはならない。
これが定められたのはその昔、脳筋の生徒や燃えすぎた生徒によって、毎日の様に破壊された事による影響があったとかないとか。
その為、爆豪など個性が外部に影響を及ぼしやすい生徒は、大体フリーの更地に行く事が多い。
「鋭児郎休もうか。疲れたんじゃない?」
決められた範囲内を逃げるイチを、切島が硬化し続けたまま捕まえる(個性の延長と捕獲訓練)
イチは逃げるのを止め一伸びすると、隅に置いたドリンクを取りに行った。
切島は腰に手を当て息を整えると、着ていたシャツで流れる汗を拭いてその場に腰を下ろした。
「あー、まだまだぁ!って言いてぇけど、確かにずっと動き回ってると疲れるな。おっ、ありがとな」
正面に座るイチがドリンクを投げて寄越すと、切島は勢いよく喉を潤した。
「うー、生き返る!にしても、逃げるだけの相手を捕まえるっての難しいのな。
俺は、個性が捕獲向きじゃねぇから、これからの課題だなぁこりゃ」
「相手が皆そう(応戦的)ってわけじゃないからね。外なら捕まえやすいよ。
その時は他と協力したら良いんじゃない?」
「そうだなぁ。だけどよ、自分(ヒーロー)しかいない時とかに備えて、やっぱ捕獲しやすい技とか考えねぇとな」
「……寧人も似たような事言ってたけどさ、何でそうなるの?」
「どういう意味だ?」
「だって自分しかって【ヒーロー】の自分がって事でしょ?周りに誰も居ないんなら分かるけど、何で【ヒーローだけ】なの?」
イチの問いかけに言葉を詰まらせた。
良く考えずに答えるのは良くない……そんな切島の人となりが垣間見える時間が過ぎていく。
「……駄目だ、考えても分かんねぇわ。悪りぃな」